藍色の城
蝉の声がこだまする夏の午後。
『少し寄ってく?親は居ないけど。』
『え…?』
『弟はいるかもな。』
ハンドルをきりながら車線変更した
横顔を見つめる。
『いや、咲妃ん家行く前に実家通る
からついでに…と思ったんだけど。』
急に言い出すから正直焦った。
でも、弟さんならまだ気が楽だと
思っちゃったのが全ての始まりだった
のかなって、今更思ってる。
この時実家に寄らなければ、
キミに逢わなければ、
少し先に受けた陽からの
プロポーズに泣いて喜んでたのかな。
『いいよ』と答えた瞬間から
動き出してた歯車。
誰も、止め方を知らずに……。