藍色の城



だから、あの日の夜は
傷付いたフリをして
キッカケが出来たと確信した。



姑息だとか、
やり方が汚いだとか、
どうでも良かった。



本能の赴くままに突き動かされる
ことが、恥じらいだとは思わない。



むしろ、自分に正直になれた
この瞬間が、
満たされた瞬間だから。
ただ、嘘偽りのない本来の自分に
目を背けられなかっただけ。



『いつも遅くまで居るから今日は
早くあがりなよ』と店長に言われた。



明日は休みということもあって、
少しでも長く、と
店長の労いの言葉だった。



有り難く受け止め、早めの帰路につく。



陽は飲み会で遅くなると言ってたし
今夜くらい、ゆっくりしようかなと
思った矢先、手を入れたポケット。



チャリンと音が鳴って、
取り出したのは鍵がいくつも
連なったキーホルダー。



その中に、陽のマンションの
合い鍵もぶら下がっている。





< 27 / 121 >

この作品をシェア

pagetop