ディア・ロマンス




溜息を遠慮なく吐き出し呆れたように睨み上げた私を、男は満足げに見て頷いた。

聞いてどうするとか思うことは色々あるけど、兎に角離れたい私は男の目を見据え。



「七尾 玲。」

ぼそり、そう呟いた。




男は、私の名前を復唱するとにっと笑い。


「よろしく、レイ。」

掴んでいた手首を離して私の横を通り過ぎて行った。




――暫くその場で動けずにいると、詩織と光が慌てた様子で私の元へと駆け寄ってきた。


「ど、どうしたの玲!?」

「なんで加島に自分から!?」



加島?と聞き返した私を2人は心配そうに見つめ頷く。

そしてその表情通り不安を持たせた声で言の葉を紡いだ。





< 14 / 63 >

この作品をシェア

pagetop