ディア・ロマンス
溜息を遠慮なく吐き出し呆れたように睨み上げた私を、男は満足げに見て頷いた。
聞いてどうするとか思うことは色々あるけど、兎に角離れたい私は男の目を見据え。
「七尾 玲。」
ぼそり、そう呟いた。
男は、私の名前を復唱するとにっと笑い。
「よろしく、レイ。」
掴んでいた手首を離して私の横を通り過ぎて行った。
――暫くその場で動けずにいると、詩織と光が慌てた様子で私の元へと駆け寄ってきた。
「ど、どうしたの玲!?」
「なんで加島に自分から!?」
加島?と聞き返した私を2人は心配そうに見つめ頷く。
そしてその表情通り不安を持たせた声で言の葉を紡いだ。