ディア・ロマンス
そう言えば、加島くんはニヤリと妖しく口角を引き上げて私を見据えると。
いきなり顔と顔の距離を近付けてきた。
反射的に目を見開き眉根を寄せた私を見るなり、加島くんはクツクツと喉を鳴らすように笑った。
「加島くん、つーのはヤメロ。」
「はあ…?」
「俺は玲って呼んでんのに。」
「それはアンタが勝手にでしょ。」
「…まあ、それは置いといて。」
「……。」
「俺のことは、暁って呼んで。」
「え、イヤ。」
「犯すぞ。」
「(…いきなり犯罪者発言かよ。)」
呆れた、と言わんばかりに溜め息を吐き出してやれば。加島くんの眉根が微細に寄った。
だがそれは私も同じだ。犯すぞ発言されて誰が素直に従うと思ってんだ。
てか、コイツ私の性格上従うなんて簡単にしないことくらい見て分からないのか。