主従関係
 そんな家屋に住むのは、二人の若い男女。
 男は、橘 悠紀。
 そして少女は、未須賀芽亜という。
 今は悠紀が家にいない為、芽亜が一人で留守番をしている。 大人しい印象を受ける整った顔立ちの少女は、一見すると、壊れてしまいそうに儚い表情をしている。
 時代から外れたような水色の着物を着込み、黄緑の帯を腰に巻いている。長い、オレンジの髪は、風が吹く度に大きく揺れて、そこだけ切り取れば、絵になりそうな少女だ。
 家の庭に立って目をつむり、落ち着いて息を吸い込む。
 そこに柔らかい風が吹き込んで、桜の花びらが飛んで来た。芽亜はそれを手に取って、微笑む。口元に持ってきて息を吹き掛けると、花びらは舞い上がった。
 それを見送った後に、芽亜は家に上がった。

「・・・・・!」

「芽亜、ココにいたのか」

 一瞬驚いたが、すぐに笑顔になって、悠紀に言葉をかけた。

「お帰りなさい。今日は随分、帰るのが早いですね。悠紀さま・・・・」

 顔が幼い芽亜と違い、悠紀はどちらかというと、年齢より大人っぽい印象だ。
 短い黒髪に、翡翠の瞳。芽亜とは正反対で、シャツにズボンという、現代の人間が着る服装。

「あぁ、ただいま」

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