バニラ
背中にはフカフカのふとんがあった。

俺の目の前には、彼女の顔があった。

えっ…俺、今彼女に押し倒されたの?

状況が状況なだけに、心臓の脈打ちが早い。

ポタリと、俺の頬に冷たいものが落ちた。

「――理彩ちゃん…?」

彼女は何故だか知らないけど、泣いていた。

「――あたし…」

震える声で彼女が呟いたと思ったら口を開いた。

「――失恋、したんです…」

「えっ?」

聞き返した俺に、
「あたし、悔しくて…。

だから、だから…」

「もういいよ」
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