バニラ
「――やれやれ…」

もう寝てしまうなんて、呆気ないのもいいところだな。

実は意外と淡白な子なのかも知れないと、俺は彼女のことをそう思った。

「たぶん、覚えていないんだろうな」

酔っぱらった出来事なんて彼女が覚えている訳ないだろう。

俺につきあおうと言われたことなんて、目が覚めたら完全に忘れている。

それでもいいかと思う俺も俺だ。

彼女の隣に行くと、背中を向けて横になった。

酔って眠っている彼女を犯すほど、俺は子供じゃない。

大人かと聞かれたら、それはそれで困るけど。

彼女を背中で感じながら、俺は目を閉じた。
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