バニラ
「ま、待ってくれ、理彩!」

しつこいのよ!

和志に向かって言い放ってやろうと思った時、
「理彩にさわらないでくれるかな?」

聞き覚えのある声と共に、躰を抱き寄せられた。

「――恭吾…」

見あげたら、恭吾がいた。

「俺、言ったよね?」

眼鏡越しから恭吾ににらまれ、和志は下を向いた。

「今後いっさい、理彩に近づかないで欲しい。

今度理彩に近づいたらストーカーとして訴えるから。

君をこの世から消そうと思えば簡単だから」

淡々と和志に向かってそう言った後、恭吾はあたしの手をひいた。

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