バニラ
恭吾はフッと笑うと、
「遊びとか、その場限りじゃなくて」

本気、みたいだ。

少しだけ、あたしは目を伏せた。

「――あたし…」

「んっ?」

「期待しちゃうよ?」

「何なりと」

「わがままだよ?」

「知ってる」

「――遊びだったら、許さないから」

「その時は殺しても構わないよ」

赤信号で、車が止まった。

「――ねえ…キスして、いい?」

「んっ」

恭吾の顔が近づいてきた瞬間、あたしは目を閉じた。
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