バニラ
「何か理彩の甘いかも」

「ちょっと、恭吾!」

自分の指をなめる彼の顔をあたしは両手で包むように挟んだ後、自分の方へと引き寄せた。

あたしの方から恭吾と唇を重ねた。

軽く触れた後に離して、またもう1回唇を重ねた。

お互いが恥ずかしくなるくらいに、何度も何度も繰り返した。

「激しいのはできないの?」

何度目かで、恭吾が言った。

「――そんなの、無理」

言った後でまた顔を近づけようとしたら、
「恥ずかしくてできないなんて、言わせないから」

寸でのところで恭吾に言われた。

唇にかかる吐息は、まるでキスしているみたいだ。
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