バニラ
口の中に入った彼の指は、あたしの舌を器用に弄んだ。

それが苦しくて、今にも吐き出しそうだ。

もう出して欲しい…!

あたしの頭の中を読んだのか、恭吾は解放してくれた。

「――ッ、ふっ…」

まだ胸の中に居座る吐き気が苦しくて仕方がない。

「あーあ、こんなに汚しちゃって」

あたしの唾液にまみれた自分の指を、恭吾は物珍しそうに見つめた。

「そんなに、気持ちよかった?」

ニヤリを笑った彼に、あたしは返す言葉が見当たらない。

ペロリと恭吾は舌を出したと思ったら、指についた唾液をなめた。

「ちょっ…!」

あたしは恥ずかしくなった。
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