バニラ
そっと目を開けたら、目の前には眠っている恭吾の顔があった。

その顔にいつもかけている眼鏡はない。

恭吾はあたしを抱きしめて、寝息を立てて眠っている。

あたしは恭吾の胸に擦り寄ると、彼の体温を感じた。

ああ、温かい。

何気なくベッドの隣にある小さなテーブルに視線を向けると、そのうえに置いてある恭吾の携帯電話がチカチカ光っていることに気づいた。

もう、電源くらい切ればいいのに。

って言うか、こんな時間に誰?

好奇心に負けて携帯電話に手を伸ばしたのが間違いだった。

「――えっ…?」

ディスプレイには、“中原”と言う名前があった。

この人は誰?
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