バニラ
情けなくて、屈辱的で、あたしの目から涙がこぼれる。

「彼氏が他の女と楽しそうに笑ってる姿を見て…ああ、あたしはその程度だったんだなって」

勝手に出てくる涙は、もう何もわからない。

もう嫌だと、思ったその時だった。

「つらかったんだな」

東雲さんの大きな手が、あたしの頭に触れた。

「――東雲、さん…?」

彼の名前を呼んだあたしに、
「恭吾でいい」

「――恭吾…」

恭吾は眼鏡の奥の目を悲しそうに細めると、
「そんな立場、俺は絶対にさせないよ」
と、言った。
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