バニラ
「だよね、彼氏に悪いもん」

東雲さんがそう言ったのと同時に、あたしの頭の中に思い出したのはあの光景だ。

彼氏があたし以外の女と一緒にいた、あの光景である。

「彼氏なんかいないです!」

あたしは首を横に振って否定した。

「あたし、失恋したんです…。

彼氏に振られたんです…」

そう言ったあたしに、
「…それは、何で?」

東雲さんが聞き返してきた。

あたしは、一体何を言っているの?

何で自分の失恋話をしようとしているの?

東雲さんに話をしたって、仕方がないのに。

でも唇は、勝手に動く。

「あたしはキープの立場…いわゆる、セフレだったと思うんです」
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