バニラ
怒鳴られた彼女はさっきまでの勢いはどこへ行ったのかと聞きたくなるくらいに黙ってしまった。

「あたしは、遊びで恭吾とつきあっていない!

ちゃんと真剣につきあっているんだから!

恭吾が好きだから、ちゃんとつきあってる!」

それでもあたしは黙らなかった。

だって、遊びとか何とか彼女に言われたんだもん。

こんなことをここまで言われて、あたしが黙っている訳ないじゃない。

「食事に行ったとかチョコレートをあげたとか何だかわからないけど、勝手なことを言って、勝手な勘違いをしてるんじゃないわよ!

勘違いが甚だしいのもいいところよ!

この独りよがり!」

彼女が手で顔を隠すようにおおい、あたしたちに背中を見せた。

「――ちょっと、言い過ぎじゃないのか…?」
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