バニラ
眼鏡越しに見つめられる優しい瞳に、あたしの心臓がドキッと鳴った。

「これ以上泣かれて、気持ちを言われたら、俺もどうすればいいのかわからない。

それ以上言われたら、理彩を襲うかも知れない」

「――変、態…」

「それくらいわかってる」

チュッと、恭吾の唇があたしの額に落ちてきた。

「――これだけ…?」

そう言ったあたしに、
「これだけって、あのな…」

呆れたように恭吾が言った。

ふと視線を向けると、あたしたちの周りにやじ馬ができていた。

やじ馬は何事かと言うようにあたしたちを見ている。

た、確かにこれは…。

「ごめん、恭吾」

あたしはすぐに恭吾に謝った。
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