秘密な彼氏
「えっと、君…今、“隆志”って言わなかった?」

その人が不思議そうに私に尋ねてきた。

「ご、ごめんなさい!

知り合いと間違えてしまいまして…」

私は頭を下げて謝った。

「もしかして、北川隆志の知り合い?」

「えっ?」

彼の口から聞いたのは、間違いなく隆志の名前だったはずだ。

しかも、フルネームである。

「知り合いと言えば、知り合いですが…」

私は呟くように答えた。

一緒に暮らしている訳だから、ねえ?

と言うか、
「あなたの方こそ、た…北川さんの」

「彼の母親の兄の子供です」

私の質問をさえぎるように、その人が答えた。
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