秘密な彼氏
「じゃあ、話に行け」

「はあ!?」

隆志が身を乗り出して上原さんにつめよった。

「はあって、このまま黙ってるつもりだったのかよ」

そう言った上原さんに、
「そんなことは…」

隆志は目をそらした。

「次の休み、特に予定ないんだろ?

その時にでも佐伯さんを紹介しろ」

まだ納得できないと言う顔をしている隆志に、上原さんは背中を見せた。

「じゃ、俺はもう帰るから」

私たちの前を去った後、すぐに玄関からドアの音が聞こえた。

「何だよ、もうー」

隆志は頭を抱えて叫んだ。

私はそんな隆志に、何も言えなかった。

いや、返す言葉がなかった。
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