秘密な彼氏
その腕で、抱きしめたの?

その躰で、彼女と…。

もう、考えたくなかった。

考えれば考えるほど、自分は醜く思えてきた。

「――うっ…」

また流れ出した涙に、私は枕に顔を埋めてもれそうになる声を押さえた。

触れて欲しい。

隆志に、さわって欲しい。

抱きしめて、キスをして、躰の隅から隅まで愛して欲しい。

都合のいい女だって、思われてもいい。

そう思いながら、静かに涙を流した。


翌朝。

「――ひど過ぎ…」

鏡で自分の顔を見ると、一言呟いた。

一晩中泣くだけ泣いたため、目はお岩さんみたいになっている。
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