Foolish boyfriend~5年前の約束~
「へぇー、知らんかった。そういえば杏の家行ったことないわ」
「基本中村ん家やからね。うちの家は休みの日も着付け教室で使ってるんよ」
まぁ確かに、遊びに行くなら9割中村の家。残りの1割はあたしの家だ。
杏があたしの家の近くに家があるって言ってたから、大体の場所は分かるけど、見たことはない。
「今日お祭りあるから、忙しいんちゃうん?」
「おん。朝からえらい賑やかやったわ。こっちは寝られへんっちゅーねん」
「あぁ、だから昼間から中村とおったんや。」
中村が自分から外出するなんて考えられないし。遊ぶならいつも中村は家で待ってるだけだし。
「おん。叩き起こしてやったわ。爆睡しててんもん、うちは暇やったし。」
そう言いながら浴衣を出す杏。
ピンクの生地に、大きな花の柄。
「えー、可愛いやん」
「当たり前やん。うちが選んだんやで? 可愛ない言うたらシバいたるっちゅーねん」
ニーッと笑いながら帯を閉める杏。
可愛くないなんて言えるわけがない。まぁ、実際に可愛いから言わないけどさ。
「舞子、動いたらあかん」
「あ、ごめん」
あまり見たことがない、杏の真剣な表情。慣れた手つきで着付けてくれる。
「髪もやってええ?」
「うん、ええよ」
真剣な表情だけど、どこか楽しそうだった。杏がこんなに器用だったなんて知らなかったなぁ。