銀杏


「えっと…あの…。」

おばさんと北条さんを交互に見ると、不思議そうな顔で咲を見つめる。

「ごめんなさい!」

頭を下げて謝ると怪訝な顔つきで「咲さん?」と呼ばれた。

「母は…いません。」

どうしても目を見て言うことができなくて、視線を逸らす。

「いません…てどういうこと?旅行中とかかしら。もちろん今すぐなんて言わないわ。都合の…」

「そんなんじゃないんです!」

おばさんの言葉を遮って叫んだ。

「…亡くなったんです。10年前に。」

「亡くなった…?10年も前…。何てこと…!」

おばさんは驚いて口を手で覆い、信じられないといった表情だ。




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