銀杏


「それじゃ咲さんはお父様とお二人で…?」

「いえ、今は幼なじみの家でお世話になってるんです。父は…生まれた時からいません。」

「え…?まあ、雪乃さんは幸せな結婚をされたものだとばっかり…。ごめんなさいね。」

「いえ。父のことは会ったこともないので、何とも思ってませんから。気にしないでください。」

ニコッと笑って答えると安堵の表情が窺えた。

咲の嘘つき。何とも思ってないなんて…。本当はお父さんのことも何かわかるかもしれないって、心のどこかで期待してたのに。

「それに…」

「?」

「母は結婚はしてませんが、幸せだったと思います。だって…私のことを愛してくれていたから…。」

もう涙は出ないと思っていたのに、瞬きをすれば零れそうなほど溜まってくる。




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