銀杏
〈北条家side〉
「今日からよろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げ、にっこり微笑むのは一文字雪乃さん。
貴士を出産した後、体調が思わしくなくて、家事をしてくれる人を探していた。
こんなに若い人で大丈夫かと不安はあった。
でも世間一般で言う家事と言われているものは、施設で躾られていて、実際働き始めると、彼女は本当によく働いた。
その上、子どもの面倒まで見てくれる。
まだ生まれて間もない貴士はともかく、博貴と早く仲良くなろうと一所懸命だった。
雪乃さんがやって来た時、博貴はまだ10歳。やんちゃ盛りで、よく悪戯の標的にされていた。
慣れてくると悪戯をした博貴に、
「こらー!待ちなさい、博貴!!」
呼び捨てで追いかけ回して、まるで姉弟のようだった。