銀杏
「…よう。」
あまりのテンションの低さに博貴の顔を覗き込んだ。
「先生、知り合いなの?」
「ああ。昔、一緒に練習した仲。なっ!北条。」
「………。」
「今夜、一緒にどうだ?久々だしゆっくり話でもしないか?」
「いや、予定がある。」
「えー?何とかなんねーの?仕方ねーな。じゃあ、来週。来週だったらいいだろ。ケータイ番号教えろよ。」
先生は強引に話を進めていく。
「ケータイは…持たない主義なんだ。」
「今時珍しい。んじゃ、これ…。俺の番号。来週夜7時に西公園駅前で待ってるから。都合の悪い時だけ連絡しろよ。じゃな。」
先生はおじちゃんが傍にいるのに挨拶も何もなく帰って行った。
博貴は深いため息を吐き、尊の父に向かい頭を下げる。
「すみません、あんな奴で。」