銀杏
久しぶりだあ…。
いつもは尊の胸が目の前なのに、今日は頭のてっぺんが見える。
まだ整えてない髪に指を通した。
「ボサボサだよ?」
「…咲の前でかっこよくしたって一緒。全部知ってるだろ?」
「…うん。」
「こうして抱き締めるの久しぶりだ。…何でもっと二人で相談しなかったんだろ。ずっとイライラしてた。俺の中で咲が足りなかったんだ、きっと。」
「私も同じだよ。…さっきみた夢で言われたの。もっと感情表現しなさいって。自分では気持ちを押し込めてるつもりはなかった。でもそう言われた時、肩の荷が下りたみたいだった。」
「…誰が言ってた?」
「…お母さん。」
「…そっか。咲のことずっと心配で見てたんだよ。」
「うん。」
尊は咲の隣に座り直すと優しく呼ぶ。
「…咲。」
「ん?」
尊の優しさに満ちた瞳は咲を大きく包み込む。
どちらからともなく、顔が近づいて唇が触れた。