銀杏
「手、貸して。」
黙って差し出された手を握る。
やっぱり同じに感じる。
「起こして。」
「ふっ…甘えん坊。」
ぐっと力を込めて軽々と引っ張り上げた。
「ついでにおぶって部屋まで行くか?」
「うん。」
「冗談だよ。」
「やあだ。やって。言ったんだから責任持ってよ。」
「ちぇっ。冗談なのに…。」
クスクス…
「そんなこと言うからだよ。恨むなら自分を恨んでね。」
尊の背中、大好き。
階段を注意深く上がる。
部屋に入ってベッドに下ろされたけどぎゅっと掴まって離れなかった。
というより離れたくなかった。
「…いつまでしがみついてんだよ。」
「んー、まだ。尊の背中、好き。」
「はあ?背中かよ。…俺は正面からが好きだけど。」
尊は立ち上がって咲の前に立つと、中腰になって咲を抱き締めた。