四竜帝の大陸【青の大陸編】
「え、えと。うん。ハクちゃんもちょっと、いけなかったね。乱暴だったかも」
「あん? ‘ちょっと’で ‘かも’か? あれが!? 俺様じゃなかったら瞬殺だったんだぞ! おちびは分かってねぇな。……ま、分からせるために俺様が来たんだがな」

竜帝さんはカップを置き、テーブルの上を歩いて私の目の前に来て言った。

「帝都に来い。いや、来てくれ」

青い竜は、小さな頭を深々と下げた。

「セイフォンではなく俺の元に、<四竜帝>と共に居てくれ。この世界を……【ヴェルヴァイド】から【世界】を護る為に」

竜帝さんと同時にダルフェさんとカイユさんも地面に膝をつき、頭を下げる。
 先ほどまでの穏やかな(?)雰囲気は一瞬で消え、緊迫した空気に変わった。
切り替えについていけない私は間抜けな声しか出せない。

「へ……へぇい?」
 
ハクちゃん。
貴方は悪者決定ですかっ!?

「じじい、いや【ヴェルヴァイド】は最強の存在だったが今では‘最凶最悪’だ。原因はお前だ、おちび。この世界にヴェルのつがいは存在しなかった。だから【ヴェルヴァイド】は最強ってだけで、世界にとって脅威でも災厄でも無かったが」

竜帝さんは顔を上げ、青い目を私に向けた。
硝子玉のようでもあり、宝石のようでもある不思議な瞳。

「全てはつがいであるお前次第。あの猛獣を繋いでおける鎖はあんただけだ」
「わ、わたし……っ」

分かってる。
私だって、分かってる。
私がしっかりしないと駄目だって。

「唯一の頼みの綱である‘つがい‘が人間……しかも異界人であるおちびじゃ鎖どころか蜘蛛の糸だ。見た目は綺麗だが細く柔で……油断するとすぐ切れる」

私が頼りないってことよね?
反論の余地無しです。
さっきだって必死で止めたのに、ハクちゃんは竜帝さんを……。

「だから、俺達がおちびを支える。竜族はおちびの‘糸’を最高最強の‘鎖’にして世界を【ヴェルヴァイド】から護る。つまりだ」

青い目がくるりと回り、きらりと光る。

「おちびがいつも笑って幸せで過ごしてくれれば、あの凶悪じじいも世界をどうこうしようなんて考えねぇよ。……おちびがこの世界を愛してくれれば、な。愛するって言葉分かるか? 好きになる、大好きになって大切になって……かけがえの無い、失えないものだ」

愛するって単語……言葉。

「好き……大好き……あ、あい……愛?」

さっきは分からなくて、使えなかった言葉。

これで覚えた。
けど……。
愛する?
この世界を?

「わ……わ、わたしは。私は」

私は。
この世界を。

この世界を、愛せるだろうか?

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