四竜帝の大陸【青の大陸編】
「それにヴェルの……<監視者>のつがいが異界人だってことはセイフォン王宮から情報が駄々漏れだったせいで、各国の上層部に知れ渡ってる。<監視者>が果たすべき‘役目’よりも、つがいに重きをおいた行動をとっている事実が一部の奴等を浮き足立たせるんだ。おちびを懐柔して<監視者>の力を手に入れようって人間をな」

ハクちゃんは‘つがい’……伴侶である私には優しい。
自分の身体を、私の朝食に提供しようと考えるくらいに……。
彼の最優先は私。

うぬぼれとかじゃなく、この一ヶ月間一緒だったからはっきり分かる。
ハクちゃんは私を幸せにしたいと言ってくれた。
でも、ハクちゃんは‘りこの幸せ’が分からないと……。
幸せにしたいのに‘幸せ’が理解できないハクちゃん。

幸せ?
私の‘幸せ’って何?

家からパジャマ姿で連れてこられて。
生まれた世界から余興の失敗で‘落とされ’て。
言葉も文字も勉強しなきゃならなくて。
生活するにはダルド殿下の‘良心の呵責’につけいらなくちゃ、一文無しの私は生きる術が無くて。

お気に入りの服もバッグもローンがやっと終わった車も、秋に予定してたいた婚式も。
お母さんもお父さんも姉妹も友達も。
私の生きてきた26年間でこの手にあった全てを失ったのに。
奪われたのに。

この世界を愛する?
 
ふざけんな、だ。
私はそんなお人よしじゃない。
聖人君子じゃ無い。

幸せ。
私の幸せ?
持ってたものを全部失った私……。
この世界での‘私の幸せ’って?

ねぇ、ハクちゃん。
私にも分からないの。

私の……私達の‘幸せ’が。

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