四竜帝の大陸【青の大陸編】

23

「わ、私。この世界の偉い人に利用されたくないです。ハクちゃんとひっそり、こっそり生きていきます。言葉とか常識をセイフォンで勉強させてもらって……。働ける知識を身に着けて将来的にはどこかの街中で普通に暮らしたい」

幸せ探しは自分探しだって、誰か言ってた気がする。
26で自分探しって、なんかあれだけど。
私の場合、しょうがないよね。
異世界に来ちゃったんだし。
しかも不本意に。
ひっそり、こっそり……穏やかに生活していけば‘幸せ’もそのうち分かってくるかな?

「あのな、おちび。そのじじいが一緒じゃ人間の‘社会‘には混じれない。2歳児だって<監視者>が白い竜だってのは知ってる世界だぞ? 人型も駄目だ。あの姿はいろんな意味で有名だからな。しかも働くだって? おちびが出来るような仕事はほとんどないぞ? 店の売り子や給仕の仕事ならできるかもしれないが稼ぎは微々たるもんだ。1年働いたって今着ている服一枚買えない。てっとり早いのは娼館にでも入って身体を売ることだ。異界人で女で力も美貌も無いおちびが‘普通に暮らせる’ほどこの世界は甘くないんだよ」
 
竜帝さんの言葉は知らない単語があったから、私はハクちゃんに聞いてみた。
さっきから目を閉じて静かなハクちゃんだけど、意識はあるみたい。
鍋の中で丸くなった身体を撫でると、うっすらと眼を開けて私を見てくれた。

 =どうした、りこ? 

念話……あ、この感じは他の人には聞こえない‘内緒話モード’だ。
ハクちゃんの念話は内緒話モードと他の人にも聞こえるモードがあって、しかも聞こえる人を選別可能だっていうから凄い。
でも、ここで私が喋らないで内緒話したら竜帝さんに失礼だから私はこちらの言葉で質問した。

「ねぇ、‘娼館’で‘身体を売る’って、私にも出来る仕事?」

 =なっ!?

がばっと鍋ベットからハクちゃんが立ち上がり、小さな身体がぶるぶる小刻みに震えだした。

「私もそのうち働く必要があるから。‘娼館’で雇ってもらおうか?」
「げ! お、おちび! お、お前は何言って」

竜帝さんは激しく両手を振りながら、後ずさりした。

「? だって、私にできる仕事はあんまりないんでしょう? ‘娼館’ってお店はすぐに雇ってもらえて‘身体を売る’仕事は給仕の仕事よりお給料が良いって言ってたよ。私、働いてハクちゃんと暮らそうと思って」

あ、でもハクちゃんは有名人(?)だから街は駄目って言ってた?
全部は聞き取れなかったから……。
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