四竜帝の大陸【青の大陸編】
ち、ちがう! 今のは例えであってだな。俺様が言いたかったのは……! つまり、おちびが働くのは現実的じゃない選択肢ってことだ。世界平和の為に働くのは勘弁してくれ! ‘働かない’のがおちびの‘仕事’だ! あ、いや、そうだ! 雇い主は俺様……ってか四竜帝全員だ!四竜帝がおちびを雇う!さすが俺様、天才だ!」

ん?
雇うって言ったよね、今。

「竜帝さんが私を雇うの?」

青い竜は頭をぶんぶんと上下に動かして言った。

「雇う、雇うぞ! 俺様はこの大陸一の貿易会社を持ってるから、金なら腐る程ある。良し、おちびはじじいのコネがあるから本社勤務だ。本社は帝都にあるから、引越し決定だ!」

青い眼をきらきらさせて言う竜帝さんはとってもラブリーだったけど、なんとなく胡散臭い感じがして私はカイユさんに確認せずにはいられなかった。
雇ってくれるのは分かったけど、細かいとこは単語が全く理解不能。
雇う・帝都・引越しは分かったけれど。

「カイユ。竜帝さんが私を雇うって言ってるの。どう思う?」

カイユさんは竜帝さんの部下だけど、私に嘘をついたりしない。
なぜかは分からないけれど、私のことを真剣に考えてくれる人だ。
カイユさんは空色の瞳を見開き……嬉しそうに言った。

「トリィ様。私を信頼して下さってありがとうございます。その信頼を失わぬよう、カイユの率直な意見を述べさせていただきます」

カイユさんの顔から笑みが消えた。

「トリィ様がどうしても仕事をしたいとお考えなら陛下に雇われるのは現時点では最善の策でしょう。各国の権力者も陛下の庇護下にあるトリィ様には直接的に接触できなくなります。後見人として認定されたダルド殿下の面子を保ちつつ、セイフォンの政治からも距離が置けます。それに陛下の貿易会社は竜族で構成されておりますから‘つがい‘のヴェルヴァイド様がご不快な思いをされぬ様な労働条件・労働環境の提供可能です。人間社会ではまず無理でしょう。竜族の雄の特性は同じ竜族しか正しく理解されません」

むむっ~。
単語が難しいです、カイユさん。
あ、そうか! 
彼女はハクちゃんの通訳があることを前提にしたんだ。
私だけに言ったんじゃない。
ハクちゃんに向けて言った言葉でもあるんだね、きっと。

「ハクちゃん! 通訳し……え?」

通訳してもらって、意見をきいて相談を……と思った私はハクちゃんを見て、びっくりした。

「ハ、ハクちゃん?」

鍋が蓋をされていた。
蓋は使うつもりがなくて、テーブルの隅に置いておいたのに。
ピタっと、しっかり蓋が!?
まさか自分で蓋したの?
 
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