四竜帝の大陸【青の大陸編】
ハクちゃんは普通の竜族じゃないって竜帝さんが言ってたけれど。
その自己中思考回路、なんとかならないのかな?

さっきの中庭でのやりとり、忘れたの?
聞いてなかった?
ハクちゃんがそんなんだから、世界を滅ぼす悪キャラ認定されちゃうんだって!
それを止める勇者役が、私になっちゃってるんだよ~。
私はそんなキャラじゃなぁ~い!

平穏・平凡・平和が好きな小市民キャラです。
なのに、なぁ~のぉ~にぃい。
うう。
顔が引きつるのが自分でも分かる。
口の端がぴくぴくする。

「……怒るよ?」

私の言葉に、ハクちゃんは大げさなほどびくりと肩を揺らした。

「お、怒るな。りこ、我が悪かった。我が全部悪い! すまなかった」
 
顔色を伺うように言うハクちゃんに、ますます私はイラッ~としてしまう。

「悪かったと思うなら、どこがどう悪かったか言って。説明して」

悪の大魔王様はおっしゃった。

「……一人で部屋に行き、着替えてきたことだな? りこに何も言わず離れたうえにまた、黒い衣服を選んだから……。しかし、我はやはりりこの持つ色を身につけたく……」

違う。
違うよ、ハクちゃん。

やっぱり、分かってない。
さっきの会話と繋がってないし。
その頭の中はどうなってるの?
なんだか……可哀相になってきた。
可哀相で、悲しい。
ハクちゃんは自分でも言っていたから。
‘足りない’んだって。
感情が乏しかったから、人の気持ちを察することが難しいって……出来ないって。

「術式を使ったから気づかれないと思った我が浅慮だった。着替えれば分かるものだ……りこ?」

両手を伸ばした。
私の動作に合わせるようにかがんでくれたハクちゃんの首に、腕を回し引き寄せる。

「ハク、ハクちゃん」

男に人に自分から抱きつくなんて以前の私なら考えられなかったけど、ハクちゃんに関しては違う。綺麗過ぎて人間っぽくないからか、おちび竜の印象が強いせいか……自然と触れるできてしまう。もっとドキドキするものだと思ってたけれど。
ドキドキではなくて……安心感に近いかな。

「体調が変なの治った? もうなんともない?」

金の眼が細められた。
微笑んだようには見えない。
ハクちゃんは微笑まない……微笑む表情が作れない。
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