四竜帝の大陸【青の大陸編】
他の人から見たら、眼を細めたハクちゃんはかなり怖い顔かもしれないけど。
でも、私には。

「うむ。全器官復旧したぞ。痺れも無い。心配をかけてすまなかった。だが……何故か嬉しかった。りこが我を‘心配’してくれて。すまないと思うのに、それ以上に嬉しいのだ。こういったことは‘普通‘なのか、それとも異常な思考なのかが判別できぬのだが」

私には……はにかんだように見えるの。
金属のような冷たい印象の金の眼も、私にはお日様のように優しく暖かく思えるの。

「異常じゃ無いよ。それは」

心配をしてもらうと、愛情を感じる。
私が手を擦りむいた時、ハクちゃんの取り乱しようを見て私もちょっと嬉しいって思っちゃったもの。

白状すると……私のことで大魔王(?)になっちゃうハクちゃんを見ると心がぽわ~んってなっちゃうの。
あぁ、この人は私のこと本当に好きでいてくれてるって、安心する自分がいる。
こんな私でもハクちゃんは本気でつがいにしてくれたんだって、実感してしまう。
愛情確認方法としては間違ってるのかもしれない。
でも。
だって。
私はハクちゃんみたいな、特別な存在じゃない。
なんの力も持ってないし、ハクちゃんと釣り合う美貌も無い。
ハクちゃんに豪華な衣装を買ってあげれる財力どころか無一文で、居候だし。
自信なんか持てる要素ゼロ。
つがいという言葉に縋るしかないんだもの。

「ハクちゃん、ハクちゃん。私、私ね……ハクちゃんのことが好きなの。好きになっちゃったの。だから、だから……」

あれ?
なんか、おかしい。

「りこ?」

身体に力……入らない。

「りこ!」

瞼が重い。
頭の中がふわわ~んって。

あれ?
私、どうし……。

「お? 薬が効いてきましたね。姫さんの意識が完全に落ちたら出発しますよ旦那。んなに睨まんで下さい。ハニーが姫さん用に調合したもんだから安心ですって。ハニー、駕籠を中庭に廻してくれ。俺が飛ぶよ」
 
え? く……くすりって、薬?

「ごめんな、姫さん。説明は目が覚めたらな。おやすみ」

ちょっ!

あ、あれれ……。

「……安心して眠るが良い。我の愛しい‘つがい‘よ。りこ、我もりこを……りこだけを愛している」

冷たいのに、柔らかで優しい感触。
それが顔のいたるところに何度も落ちて来るのを感じながら、私は意識が溶けていき……。

ねぇ、ハクちゃん。
今、言ったこと。
目が覚めたら、もう一回言ってね。

あれは夢だったなんて、言わないでよね?

あ。

デザート……まだ全部食べ終わってない。


 
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