四竜帝の大陸【青の大陸編】

27

「支店長~! カイユ様から連絡が入ったから伝えてってミチ君が……。到着時間は予定より早くて、なんと夕方には着いちゃうかもって! どうしましょう?」

メリルーシェ王国東部最大の都市フィルタにある、青印商事メリルーシェ支店。
2階の事務所で午後のティータイムの準備をしていたバイロイトは、<今週の副支店長>の言葉に耳を疑った。
事務所に駆け込んできた少女は今、なんと言った?
子持ちの自分ではあるが、聴力が衰えるほど老いてはいない。
幻聴か?
あまりの忙しさにやられたのか?

「落ち着きなさい、コナリ副支店長。そんなに早く着くはずがないよ。君の聞き間違えだろう」

巻き毛を頭頂部で1つにまとめ、大きなピンク色のリボンで飾ったコナリ嬢は大きな瞳をうるうるさせながら頷いた。

「コナリも早すぎると思いますぅ。でも、でも~」

彼等がセイフォンを出たのは、一昨日の夜だと報告を受けている。
この支店までは通常飛行速度で、丸3日以上かかる。
あわてん坊のコナリのことだ。
憧れの人であるカイユが関係した伝言に、舞い上がってるだけだろう。
茶器をテーブルに並べ、昨日の昼間に買ってきておいたアチア菓子店の焼き菓子数種を器に盛り付けた。

「ほら、コナリの好きなアチアのお菓子ですよ? 先に食べてていいですからね。私はミチ課長達を呼びに行ってきますから」

事務所の扉を開けた支店長に、副支店長が慌てて注意をした。

「違いますよ! 今週の課長はラーズ君ですぅ。ミチ君は係長ですよ~。支店長はいっつも間違えるんだもん。ジャゼさんを見習ってくださぁい! ジャゼさんは半年先の役職当番まで暗記してますよぉ」
「……すみません。善処します」

今週は副支店長がコナリ、係長がミチ。ラーズは課長。
どうでもいいような気もするが、彼等にはこだわりがあるようなのでバイロイトが合わせるしかない。
コナリ達三人は、まだまだ幼いのだから。
幼竜は絶対数の少ない竜族にとっては宝物。
愛情を注ぎ庇護してやる存在の可愛い遊びに付き合うのは、なかなか楽しいものだ。

階段を降り、1階の店舗で納品された新商品の展示作業をしている少年二人の姿に自然と顔が綻んでしまう。
20年もすれ、ば自分の息子も共に働けるようになるのだろうか。
想像しただけで幸せな気分になれる。

「ラーズ課長、ミチ係長。お茶にしましょう。あ、ミチ係長。電鏡を貸してください。後でカイユに確認したいことがあるんです」

濃茶の髪を後ろで三つ編みにしたミチは、にこにこしながら電鏡をバイロイトに差し出した。
< 123 / 807 >

この作品をシェア

pagetop