四竜帝の大陸【青の大陸編】
「はい、支店長。カイユ様は予定より早く着いちゃうみたい。楽しみです! 僕、お会いするの初めてでドキドキして……。昨夜は興奮しちゃって寝れませんでした」
「僕も、僕も! 竜騎士の中で1番強いんでしょう、カイユ様って? 母様に自慢しちゃいます。きっと驚きます!」

普段は大人しいラーズもぴょんぴょんと飛び跳ねて、落ち着きが全く無い。

「事務所で休憩しておいで。今日は皆、気が高ぶってるようだから店は早く閉めることにするよ。私が戸締りしておくから」
「はーい!了解で~す」

仲良く手を繋いで階段を上っていた二人を見送り、受け取った電鏡を上着の胸ポケットに入れてから店の鍵を閉めた。
簡素な鍵は外から強く押せば壊れるような脆い作りだが、此処に強盗に入るような命知らずは居ないので十分だった。
 
青印商事メリルーシェ支店などという地味な名前ながら珍しい4階建てで、なかなかに洒落た外観を持つ建物の主が青の竜帝であるということは、この街の誰もが知っている。
店舗入り口の扉は所有者を知らしめる為、特殊な装飾が施されていた。
青い扉に浮かび上がるように彫られた、羽ばたく竜の紋。
何を表すかは一目瞭然。

「さて。ジャゼリズには暫く出勤は無しと連絡してあるからよしとして」

シャゼリズ・ゾペロは最近契約した術士で、昨日から休んでもらっている。
風邪をひいたらしくずいぶんと咳き込んでいたし、カイユが滞在中は休業していいと帝都の社長から指示が出ていた。
あの金儲け大好き社長らしくない指示だが……。
忙しかったので正直な所、助かった。
休業して、カイユの任務をちょっと手伝うだけでいいというし。

「さて。カイユは何泊するのかな? そういえば何の任務中なんだろうか。社長はカイユの指示に従えってしか、言わなかったしな。私は電鏡とあまり相性の良くない体質だから、ミチにカイユからの連絡はまかせっきりにしていたけれど……。高速移動中のせいか、ミチもカイユの言葉が聞き取りずらいと漏らしていたな」

電鏡は手の平に乗る程度の小さい物を、この支店では使っている。
携帯に便利なことが売りの製品だが、大型の物より1回の使用時間が短いのが難点だった。
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