四竜帝の大陸【青の大陸編】
カイユが使っているのも同じ物だから1回に3分程度しか使えないし、1度使うと1時間程休ませないと音声がぶれてしまう。
携帯用電鏡はいくつかを使いまわしするのがこまめに連絡をとりたい場合のコツだが、カイユは運悪く1つしか持っていなかった。
帝都から4つも持って出たが、割ってしまったらしかった。
電鏡はガラスほどの強度しかない。
見た目より乱暴で凶暴な性質をカイユが持っているのを知っているバイロイトは驚くこともなく、そうだろうなと思っただけだったが社長は怒っていた。
電鏡は高級品だ。
カイユが壊した3つ分の金額は……考えると頭痛がしそうなので考えない。
頭痛。
バイロイトは電鏡と相性が悪く、使用中は酷い頭痛がするからなるべく使いたくなかった。
が、そうも言ってはいられない。
ミチから伝えられたカイユの希望は最上階を貸し切ることと、新鮮な魚介類と野菜などの食料品の備蓄(なぜか大量のラパンの実も)。
はっきり分かってるのはこれだけだ。
他にも要求はあるようだが……ミチには聞き取れなかったのだから、仕方ない。
カイユが電鏡を1つしか持っていないので、1時間程しないと連絡事項の確認も不可能。

「ゆっくりとお茶をして、こちらから連絡を入れてみましょう。あせっても無理なものは無理。不確かな音声では、重要なことを間違えてしまう恐れもありますからね」

細身の長身に品の良い顔立ち。
灰色の髪は、きっちりと後ろで1つに縛られている。
珍しい藍色の眼は、彼の妻のお気に入りで。
華美ではなくすっきりとした衣服は、最近流行っている黒の竜帝の大陸風の背広の上下。 
性質は穏やかで優しく、生まれてから1度も声を荒げたことすらない。
 
そんな支店長を悲劇が襲うのは数十分後。
彼は頭痛ぐらい我慢するべきだったと、死ぬほど後悔することになった。



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