四竜帝の大陸【青の大陸編】
駕籠が無事に屋上の床に着いたと同時に、我は動いた。
扉を引きちぎり放り投げ、中に入る。
3部屋に区切られた駕籠の内部の、最も奥に位置する寝室に真っ直ぐ向かう。

後ろでカイユが何か言っているが今の我の頭にはカイユの言葉を理解しようという意思も無ければ、余裕も無かった。
術式で寝室に移動することすら、思いつかなかった。

我の頭の中は、りこをこの手に取り戻すことしかなく。
【繭】に駆け寄ると白くふわりとしたそれに両手を差し込み、左右に引き裂いた。
内部に満たされた特殊な溶液が噴出し、飛び散った。
赤く、粘度の高い溶液が邪魔でりこの姿が目視できない。
カイユの甲高い悲鳴が響いたが、どうでもいい。

りこ。
りこ、りこ……りこ、りこりこりこ!
我のりこ!

裂け目から腕を深く入れ、探り当てたりこの裸体を強引に引きずり出す。
りこの小さな身体はどろりとした赤い溶液にまみれ、生まれたての赤子のようだった。
【繭】から取り出したりこを我はかき抱き、しゃがみこんだ。
膝が震え、立っていられなかった。
しっかりと抱きたいのに腕が我の意思に反し小刻みに揺れ、りこの濡れた身体を落としそうになったので我は自分の身体を床に倒しりこを上に乗せた。

震えが止まらぬ手で溶液に濡れて重くなったりこの髪をすいてやり、赤く染まった顔を舐めて綺麗にしてやると、睫毛が微かに動いた。

「りこ。目覚めろ、りこ」

りこの意識が浮上し始めたのを感じると我の身体も落ち着き、震えが徐々に収まっていく。
我はりこの中にある竜珠に目覚めを促すため、微弱の力を送り込んだ。
常より低下していたりこの体温が元に戻るまでゆっくりと力を分け与えながら、りこの目覚めを待った。

りこを取り戻したのだ、我は!
地獄の2日半は終わったのだ。
我の‘寂しい’は終わり、りことの蜜月期が再開するのだ!

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