四竜帝の大陸【青の大陸編】
意識の朦朧としていた2日間、私はずっとハクちゃんにくっついていたらしく、その影響か……私はちょっとおかしいの。
ハクちゃんから離れるのが怖い。
ハクちゃんの姿が見えてないと不安で。
これって、分離不安?
小さい子供や室内犬がなる症状……。
お母さんや飼い主にべったりした生活を送っているとなるって、聞いたことがある。
考えてみると……この2日間だけじゃない。
出会ってから1ヶ月、まさにべったり生活だった。
お手洗い以外は常に一緒。
竜のハクちゃんはとにかくラブリーだったから抱っこしまくりだったし。

分離不安。

うっ。
26の大人として、それってどうよ!

「りこ?」

私は無言でハクちゃんの左手を握り、居間に向かった。
照れと焦りで早足になってしまったけれど、歩幅が違うハクちゃんはゆったりとした動作で私のなすがままについて来てくれた。
ハクちゃんの手はひんやりしていたけれど。
どんなに冷たくても。
離したくないと思ってしまう私はかなり、重症かもしれない。

これが分離不安によるものなのか。
恋愛感情から発生するものなのか。
 
どうやって見分けたらいいんだろう?

「トリィ様。今日は大事をとって休みましょう。明日、支店従業員に会う時間を作りますね。市内観光を午後にして……夕食後に出発いたしましょう」

バイロイト支店長さんや他の人に挨拶をしたいと言った私に、カイユさんが今後の予定を話してくれた。
私をソファーに座らせ、何枚ものタオルを使って丁寧に髪の水分をとってから結い上げて仕上げに鮮やかな黄色の生花を挿してくれる。
モモチというこの花はさわやかで優しい芳香にリラックス効果があるそうだ。
リラックス。
カイユさんから見て、今の私はリラックスが必要だと感じる状態なの?
手鏡に映ったカイユさんと眼が合い、ドキリとした。
私の気持ち、ばれているの?

「だいじょうぶですわ、トリィ様。もう【繭】は使いません。ヴェルヴァイド様と駕籠に乗ってのんびり帝都に向かいましょうね」

優しく微笑むカイユさんの眼は、私の右手の様子をしっかりと確認していた。
うっ……ちょっと、あの、これはですね~。
私はハクちゃんの指を握っていた。
だって、どこか触れてないと不安というか……。
白く長い指には真珠色をした爪がついている。
人差し指をぎゅっと握られているハクちゃんは、相変わらずの無表情。
長い足を組んで大きなソファーに並んで座り、なにかの書類を見ている。
私に指を握られてるのも全く気にならないらしく、特になんのリアクションも無い。
好きにさせてくれてるんだか、無視してるんだか……。
 
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