四竜帝の大陸【青の大陸編】
無視は無いかな、うん。
だって私が手を伸ばさなくても握れる位置に手を置いてくれてるもの。
こういうさり気なく優しいところが大人の男って感じ……大人どころか竜帝さんがいうには、おじいさん年齢らしいけど。
見た目は若くて、思考も子供っぽくて。
でも、かなりの高齢。
訊きづらくて確認してない……歳はいくつかって。
 
ま、いいか。
異世界なんだしね。
細かいことは、流そう。

「トリィ様。お茶の支度をしてまいります。この支店は珍しい茶葉を取り扱っていますから、楽しみにしていてくださいませ」

私から手鏡を受け取りながら言うカイユさんに、ハクちゃんが書類から眼を離さず声をかけた。
そういう俺様態度が違和感無いどころか、似合ってしまうハクちゃん……。
こんな感じの悪い人を好きになちゃうなんて、以前ならありえない。

「カイユ。メリルーシェ皇室から使者が来たら追い返せ。第2皇女は我が国内に入ったことを察知している。あれは術士として使えんが探知能力だけは並以上だからな」

今の単語……難しい。
よく分らない。
ま、いいか。
私の名前が入ってないから関係ないことだろうしね。

「承知致しました」

答えたカイユさんも、いつもと同じ感じだし。
問題が発生したわけじゃないってことだよね。

「カイユ。髪、ありがとう。お茶、ダルフェも誘ってね」

起きてから、彼にはまだ会っていない。
ダルフェさんが竜体になって、運んでくれたらしいからお礼を言わなきゃ。
ダルフェさんの竜体。
見たかった!
あ、次の出発の時に見られるのよね!
楽しみ~!

ハクちゃんの策により、ダルフェさんの竜体を全く見ることが出来ずに帝都に着いちゃうことになるなんて、その時は思いもしなかった。



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