四竜帝の大陸【青の大陸編】

32

昨夜はなかなか寝付けなかった。
お世話になっていたセシーさんやダルド殿下に挨拶せずセイフォンを出たことも気になっていたし……いろんなことを考えてしまったせいもあるけど、この2日間は寝てばかりだったわけだから無理ないとことで。
だから、ハクちゃんとお話しでもしようと思ったら……。

「寝るのだ。身体に障る。……りこ、頼む」

ハクちゃんに懇願されてしまった。
人型のハクちゃんは睡眠が必要無いと言って、ベットに腰掛けていた。
私はなるべくハクちゃんに近づいて……枕元に置かれたハクちゃんの大きな手に自分の手を添えて寝た。
そんな私にハクちゃんは……。

「我の手は……冷たい。人間のりこには不快であろうな」

金の眼が、揺らいだ気がした。
今のハクちゃんは念話が出来ないから、私は少々恥ずかしくても口に出して言った。

「冷たいけど、いいの。ハクちゃんの手、好き。触ってると安心するの。眠るまでこうしていてね」

ハクちゃんからの返事は無かったけれど。
私は添えるだけだった手を、しっかり握り直した。
それから……いつの間にか寝ていて。
朝、目が覚めた時もそのままだった。
カイユさんが起こしに来る前に自力で目が覚めて、良かった。




「トリィ様。これがトリィ様の乗ってきた駕籠です」

支店の皆さんとのお茶会は屋上ですることになった。
屋上は想像していたより広かった。
天気も良く、風も無い。
4階建ての支店は周りの建物より高く、眺めがいい。
眼下にはヨーロッパの古都を思わせる町並み。
遠くには青白い山脈。
空は澄んでいて、日差しがやわらかで暖かい。
景色に見蕩れている私にカイユさんが見せてくれたのは……。

「駕籠? これが」

屋上にきたときから何これ?とは、思っていたけれど。
丸みを帯びた長方形の箱?
しかも、すごい大きい!
う~ん……大型バスを4台くっつけた位?
まるで美術品のように装飾がされ、青い宝石のような石がざ全体に散りばめられている。
側面には小さな窓。
白っぽい銀色の……金属で出来ているようだから、さぞ重いに違いない。
これを運んだってこと?
竜ってあんなに小さいのに!?
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