四竜帝の大陸【青の大陸編】
鉄柵の無い屋上で良かった。
そんなものがあったら、俺の身体に刺さったかもしれない。

心臓を貫通したら、竜族の俺だって流石に死ぬ。
それに、愛しいハニーが選んでくれた服に穴が開いてしまう。
ハニーの瞳の色と似た空色のシャツ。
赤い髪・緑の眼の俺が着ると色合いが変だとコナリ嬢が言っていたが、余計なお世話だ。
このシャツにはハニーの愛情が……ん?

「今日は臨時休業だよ? 支店に用なら明日にしなよ。明日は通常営業予定らしいぜ」

支店の屋上から目の前の通りに着地した俺は、そこいらにいた人間達の好奇の眼を一切無視して青い扉の前に立つ男に声をかけた。
振り向いた男の右手には、携帯用電鏡。
男は俺が屋上から落ちてきたことには全く驚いていないようで、視線は俺の顔……頭部を凝視していた。

「赤の<色持ち>!?……まさか、そんなっ」

男の言葉に俺は笑った。
声を出さずに。
 
こいつ。
余計なことを知っている。
人間のくせに。
 
消しとくか?

此処では駄目だな。
人目がある。

さて。
どうするかなぁ~。

「お待たせ~シャゼリズさん! あれ? ダルフェさんもいたの?」

青い扉を開け、小さな顔をぴょこんと出したのはラーズ少年だった。
小さな手には電鏡。
ふ~ん。
なるほどなぁ。
支店の関係者なんだな、この人間は。

 
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