四竜帝の大陸【青の大陸編】

33

「支店長。自宅に皇室から使者が来て、これを……」

おずおずと差し出された封書を受け取り、バイロイトはため息をついた。
カイユから、皇室関係の者は取り次ぐなと言われている。
本来なら無視すべきなのだが……。
内容を確認し、ますます気が重くなってしまった。

ーー異界の無機物が国内の闇市で取引されていた。
ーー組織は潰したが、押収した数点の品物がこの世界にとって害有る無機物か判別できない。
ーー現在、市庁舎に保管中。
ーー<監視者>の判定を求む。

貴族特有のやたらに飾られた無駄な単語を省いてしまえば、内容はこんなものだ。

「あの、支店長。皇室はなんと? 使者は支店長に渡すようにと。なぜ、私に……」
「昨夜来た使者を追い返したからですよ。……4階に滞在しているあの御方の事を、皇室が嗅ぎ付けたんです。貴方を介せば<支店長>にはこれが届きますからね」
「……あの御方?」

床に視線をさまよわせ、ぼそぼそと言うシャゼリズに藍色の眼が向けられる。
金箔で花模様を施された最高級の紙を軽く掲げ、バイロイトは言った。

「<監視者>が来てるんですよ。あの御方への鑑定依頼書を装った招待状のようなものです」

薄い茶の眼が見開かれる。
バイロイトはうっすらと、笑みを浮かべた。
上品な容姿に不似合いな……嘲りの笑みを。
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