四竜帝の大陸【青の大陸編】
「りこ。我の、りこ。りこ。我だけの、我のりこなのにっ!」

私の名前を口にするのに、私を見ない。
竜帝さんを離宮で踏み潰そうとした時より、様子がおかしい。
寒気がするような冷たさと、眼にした誰もが囚われる様な艶めく微笑。

「どれだけ殺せばこの吐き気は治るのだろうか。どれだけ破壊すればこの苦しみは消えるのか。あぁ、りこ。我のりこから我以外の雄の匂いがする! りこ、りこ、りこよ」

殺す?
破壊?
だめ、そんなの駄目よ!

匂いって?
キスのせい?
支店長さんが言ってたこと。
もしかして、こういうこと?

私が他の男の人に会うのがハクちゃんにとってすごく嫌なことで、軽く触れただけのキスでこれ……。
もしそれ以上だったら?
か、考えたくない!
竜帝さんは言ってたよね。
竜族がこれからは私をサポートしてくれるって。
支店長さんは私に<自覚>しろって……。

私がハクちゃんを傷つけ、苦しめる。

私だけが。

「ごめんね」

クッキー、すぐに食べてあげれば良かった。

「ごめんなさい」

人目を気にして。
ハクちゃんはいつだって、私だけを見てくれてるのに。

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