四竜帝の大陸【青の大陸編】
脆く弱い、我のりこ。
救いは。
再生能力の移行だ。
りこは我の再生能力を受け取ることが出来る。
再生能力に付随し、回復力が高まっているために今回も大事に至らなかったが。
肉体強化は全くなされていないので風雨に負け、高熱を出した。
再生能力が高まったとしても。
か弱いりこは、容易く死ぬ。
我と違い、心臓を刺されれば即死し。
致死量の毒を摂取すれば助からない。

それに加えて。
りこは『心』が、弱い。
過度の心労は肉体だけではなく、精神も破壊してしまうだろう。
自分が世界中の者からどのような目で見られるているか、まだ大まかにしか理解できていない。
現実は、厳しく残酷だ。
この我のつがいとなった者が人間で、しかも本来は<処分>対象であるはずの異界の生物。
多くの者が好奇の視線を向け。
地につくほどに深く頭を下げながら、心中はりこを羨み妬み。
化け物の妻だと蔑み、嫌悪するだろう。
暖かで優しく弱い、我の妻を……。

いつの日か。
それを。
我のせいだと。 
りこは我を疎み、罵るのだろうか?

りこの心が我から離れるなど。
許せない。
耐えられない。
だからこそ。
りこの周りは綺麗で美しく、温かなモノで覆い隠して。
真実から遠ざけた。 
   
「我のつがいを探りに来るか、人間共よ」

潜む気配は術士のもの。
人間共はりこを殺したりはしない。
我を恐れている限り。
間者を忍ばせるのは、りこの情報が欲しいからだろう。
りこの姿、衣食住の好み、そして。
<監視者>がどれほどまでに、つがいに重きをおいているか。
我が異界人のつがいへの情に『支配』されているか、知りたいのだろう。
りこの利用価値を探っているにすぎん。

「くだらんな。さて、りこに触れるこの手は汚したくないのだが」

りこが好きだといってくれた、冷たい手。
りこに触った、この手は。
だが。
引き裂いて、ずたずたにしたい。

「目障りすぎて、癇に障るな」
「だから、俺を使いなさいな。旦那」
 
ダルフェが音もなく、傍らに降り立ち。

「引きずり出しておいてくれりゃ、こっちで処分しときます。旦那の望み通りの殺り方でね」

ダルフェと。

「お久しゅうございます。ヴェルヴァイド様」

ダルフェと同じ竜騎士。
群青の髪を持つ竜族の雌。
灰色の眼は、幼い頃と変わらないが。
あんなに丸かった顔が、ほっそりとしたものになっていた。

「ヒンデリンか。なるほど……<青>の采配か」

前に見た時は、幼竜だったが。
あれから成竜になるほどの時が、過ぎていたのか。



 
< 243 / 807 >

この作品をシェア

pagetop