四竜帝の大陸【青の大陸編】
竜族の民はそれを知らぬが、四竜帝達は知っていた……実験結果は逐一報告していたようだからな。
<黒>は先代の<青>の行動を批判し、糾弾した。
竜族がいずれ滅びる種ならば、竜族の誇りを持って潔く消えるべしと。
竜族の未来という大義名分の為に、人間を【材料】とした残忍極まりない行いは竜族の恥であり汚点だと。
他の竜帝は……<赤>は静観し、<黄>は幼すぎた。


「……爺さん、あんた何言って? 姫さんは……四竜帝達は、まさかっ!」
 
<赤い髪>は頭の回転が速いな。
もちろん、ダルフェも知らなかった。
今の<青>は先代から受け継いだ実験を人知れず放棄した。
まだ幼竜の頃に、研究棟ごと【材料】を燃やした。
泣きながら、火を放った。
生きてる状態で保存されていたモノも、死んでいる状態で保存されていたモノも燃やした。
執務室に残した数冊の資料以外、全て。
我は、資料も燃やしたと思っていたが。
<青>がどういう意図で処分しなかったか、出来なかったのか。

「<黒>よ」

ランズゲルグの葛藤など。
我にはどうでもいい事だ。 

「お前らしくない、無意味な問いだな」 

ダルフェは<黒>と……我を見て。
凍りついたように、動きを止めた。
やはり。
連れてこなくて良かった。
我は今、笑みを浮かべているだろう。 
りこの好きなそれとは、真逆な笑みを。

「我がりこを孕ませるはずなかろう?」

<黒>が皺だらけの顔で問うてきた。

「やはり、貴方様といえど不可能ですか?」

可能か不可能かなどという問いは、無意味なのだ。
なぜ分からない、<黒>よ?
簡単なことではないか。

「りこは我だけの、りこだ。……子になど、渡さない。 共有など許さない。りこの愛も血肉も、我だけのものだ。……万が一にでも、奇跡が起きて孕んだならば」
 
りこ、りこ。
我を嫌いにならないで。

「……我のりこに入り込んだ異物を引きずり出し、この手で引き裂いてやろう」


我は。
りこだけで、いい。
 
貴女しか、いらない。
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