四竜帝の大陸【青の大陸編】
む?

このような思考は。
りこが怒るか?

りこは鱗のある生物が、お気に入りなのだから。
我のりこが、竜族を残したいと願うなら。

「……もし当代の<青>が実験再開を希望した場合。人間以外を使うのなら、我は一向にかまわんぞ? ふむ……豚が良いのではないか? 実験に使った後、食えるしな。竜族は家畜の肉を好むから一石二鳥だな」

珍しく慈悲深い我の提案に。

「な、なんですと?! 誇り高き竜族にぶ、ぶ、ぶぶっつ!?」

妙に甲高い声で言う<黒>に、我は親切にも訂正してやった。
赤子だったこれも、枯れ木になったのだ。
思考も劣化したのやもしれん。
天才と賞賛された捻くれた頭の内部も、もはやスカスカか?

「ぶぶっつでは無い。豚だ、ぶた。老いて脳も萎んだようだな<黒>よ」
「ぶ、ぶ、ぶ……ぶたぁあああですとぉおお!?」

<黒>は激しく震え。
真後ろに倒れ。

消えた。

「忙しい我を自分から呼び出しておいて、会話を勝手に止めるとは。<黒>め、大陸を移ったら仕置きだな」

りこの元に転移しようとした我を。
ダルフェが引き止めた。

「旦那。教えてください。竜族はいったい、何処に向かってるんですか? あんたなら分かる……知ってるんじゃないんですか?!」

分かっている?
知っている?
そんなはずなかろう。

我は神ではない。
我は、ハク。
りこの、ハク。

「我に未来は読めぬ。我は創り出すことは出来ぬ、破壊するのみだ。お前も知っているだろうが」

ダルフェは真紅の髪を掻き毟り。

「……っち、全く。やっぱり、あんたは使えない人だよっ。 ……黒の爺さん、頭の血管がぶち切れちまったんじゃないっすか? 死んじまってりゃスッキリしますがね。竜族至上主義の爺さんに、あの豚発言はかなり威力があったでしょうよ」

床に放ってあった掛け布で黒専用電鏡を覆いながら、ダルフェは言った。

「姫さんとの子の件は、旦那らしいと思いますよ。あんたの姫さんに対する執着は、竜の雄と比べたってちょっと異常ですからねぇ。……時機を見て姫さんに、竜である旦那とは子供が持てない話をきちんとしたほうが良い。竜が人間とつがいになること事態がかなり稀な事だって話も、どうせしてないんでしょう?」

そう言えば、しとらんな。

「普通の娘は、結婚したら家族を持つのを夢見るもんです。あんまり長引かせちゃ、姫さんが可哀相ですよ? あの子はもう、26だ。家庭を持って、3~4人の餓鬼のいる歳なんですからね」
 
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