四竜帝の大陸【青の大陸編】
竜と人。
子と家庭。

家族。
家族?

「……何故、互いだけでは駄目なのだ? 竜も人も……何故、愛する者が1人だけでは足りないのだ。数が増えれば愛が分散され、薄まってしまうのではないのか? お前達……限りある命の生物の愛とは無尽蔵なのか、無限なのか。何故、愛する者が自分以外の者に愛を与えるのを許せるのだ……それが真実の愛ならば、我の愛は? りこに感じるこの愛は、何なのだ?」

子が欲しいとは思わない、思えない。
家族など、興味も無い。

りこしかいらない。
りこしか、愛せない。
我が感じているのこの強い想いは、愛では無いのか?

「……んな難しく考える必要あるんすか? 旦那は旦那でいいんじゃないっすかぁ。考えたって、結果は一つなんでしょう?」
 
そうだ。
一つだ。

これが愛であろうとなかろうと。
我には、りこだけ。

貴女だけ。 

「え……うわっ旦那、良い顔できるようになったんですねぇ! そんな風に、微笑むことが出来るようになるくらい、姫さんのことが好きなんだなぁ。かなり遅い青春満喫っつーか、微笑ましいっつーかなんというか。あんたのその妙に素直なとこ、俺は好きですよ」
「好き? 我は男と交尾する趣味は無いので、好くな。昨日は微笑むことが出来るようになった褒美に、りこにちゅうをしてもらったのだ。りこのちゅうは最高なのだぞ……りこ?」

りこの声。

少々。
薬草園から、ずれているな。

「りこが我を呼んでいる。ダルフェ、昼食にはカイユを連れて来い」

薬草園に飽いて、散歩でもしているのだろうか?

「俺だって男は無理っす。……ハニーを?」
「りこにはまだ‘母親‘がいる。脆い精神を安定させるのに、カイユの母性が役に立つ……りこ? りこっ!」

気配。
気が、揺らいでいる。
何かあったな!

「旦那? ちょっ……!」

りこ、りこ!
我のりこ。

我の、宝物。
貴女は我の、たった一つの宝物。


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