四竜帝の大陸【青の大陸編】
おい、お前等。

何故に旦那の話してる時以上に、ハニーの話で取り乱してんだよ?
ま、確かに。
俺の愛しいハニーは、綺麗で強くて。
青の竜騎士の中で、ぶっちぎり1位の冷酷非情な武闘派だが。
そこがチャームポイントの1つなんだぜ?

「光栄に思え、餓鬼共。カイユの拳は最高だぞぉ? あんまり良すぎて、意識飛びっぱなしになっちまうだろうな~」

俺は震え上がった2人を放っておくことにして、壁際に黙って立っていたヒンデリンに声をかけた。
常より険しい表情から、こいつなりに反省してるとは思うが。
青の竜騎士の頭であるカイユが姫さんの侍女を辞める気が無い現状では、こいつらの手綱を絞めんのは俺の役目だしな。

「おい、ヒンデリン。俺はお前に、術士3人の処理をしとけって言ったよな? 2人がばらばらで使えなかったから、この星持ち野郎から依頼主を聞き出し旦那に報告した。そこまでは良かったが……最後まで後始末しとけ。てめえが餓鬼共に甘かったから、こんな事態になったんだぜ? 現陛下を失いそうになり、帝都を壊滅の危機に晒したんだ」

俺はこいつ等の対術士訓練に、星持ち野郎を使うつもりだった。
だが、ヒンデリンは可愛がっている餓鬼共の‘玩具’として術士を扱った。
玩具を貰った2人は訓練としてではなく、狩りごっこで遊んでしまい。
すぐに仕留められたくせに遊びの時間を無意味に長引かせ、油断した隙に短時間だが見失う。
結果が、この様だ。

「ダルフェ! ヒンを怒らないで、僕達が悪かったんだよ!」
「ヒンは悪くない、我々が……!」

パスハリスとオフランは、俺からヒンデリンを隠すかのように間に入ってきた。
こいつ等は。
お前らはっ!
死ぬ気で駆けて行った陛下には謝罪も、感謝の言葉1つさえ出てこないのに。
陛下に……竜帝はっ。

「……陛下の変わりはすぐに【発生】するからか? 陛下は……竜帝は、竜族を命がけで守って当たり前だから……お前らにとっては竜帝は捨て駒で。普段、可愛がってくれるヒンデリンの方が何倍も大事なんだな」
「ダ、ダルフェ?」

パスハリスが薄いブルーの眼を、戸惑うように俺に向けた。
根本的に。
俺と、こいつ等は……違うのだ。
こいつ等は、自分達の失態で陛下がどうなるかなんて考えもしない。
陛下……竜帝が竜族の為に死ぬことに、なんの疑問も感じない。
<竜帝>なんだから、竜族の為に死んで当たり前だと。

ブランジェーヌ。
貴女は。

それで良いのだと。
本望なのだと。
真紅の瞳で、笑っていたっけ。




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