四竜帝の大陸【青の大陸編】

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ダルフェさんに連れられて、昼食後に現れた3人には見覚えがあった。
泥棒のおじさんを追いかけて消えた少年達と、今朝、ハクちゃんとお話してた女性……確か……ヒンデリンさん。
高い位置で結われた群青色の長い髪、雪が降る前の空のような灰色の眼の竜族の女性。

「旦那、姫さん。こいつ等は……おいっ、ヒンデリン!」

彼女はダルフェさんが何か言おうとしてるのを遮るように、進み出る。

「私の名はヒンデリン。青の竜騎士です。今回、私の愚かさが貴女を危険にさらす結果を招きました。この剣で、私をお好きになさって下さい。……ヴェルヴァイド様。幼い2人の分も、私が罰を受けます。この幼竜達は、お許し下さいますよう……」 

腰から剣を抜き、銀色に反射するそれをテーブルに置いて、ヒンデリンさんは、深々と頭を下げた。
見慣れぬ大きな刃物と言われた内容に、ぎょっとした私の様子に気づいたカイユさんが眉を寄せた。

「ヒンデリン……トリィ様は、剣など触ったことのない方なの。こんな物騒なもの、置かないでちょうだい。トリィ様が怪我でもしたらどうするの? ここに居る全員の首が飛ぶだけじゃ、済まないわよ?」

カイユさんはテーブルから細身の剣を取り、それヒンデリンさんに投げ返した。
剣は縦にゆっくり1回転し、ヒンデリンさんは慣れた仕草で柄を掴む。

「配慮が足りず、済まない」

カチンッと、腰の鞘にしまうその姿。
か……かっこいいです、ヒンデリンさん!
お侍さん(ちょっと違うかな?)みたい!

「へ~ぇ! カイユさん、マジで奥方様の侍女やってんだ。かなり意外なんだけど。あ、僕はパスハリスだよ。パスって呼んでいいよ。で、これはオフラン。オフは僕の舎弟だよ、ぱしりに使っていいからね」

ヒンデリンさんの後ろから、ひょこんと顔を出したのは、癖の強い金茶の髪を無造作に編んだ、中学生位の男の子。
いたずら好きな子猫みたいなアーモンド形の瞳は、薄いブルー。
子供らしい丸みが残った輪郭は、支店のミチ君達と同世代のように見えたけれど。
身長は……なんと、竜帝さんと同じくらいある。
だからミチ君達よりも、年齢がいくつか上だと……それにしても、この子は背が高い。
ハクちゃんにちびと言われた竜帝さんだけど、日本人から見たら長身で……180センチはあったと思う。
パスハリス君は顔付きはすごく幼いのに、背だけがひょろりと高くて……。
パスハリス君の言葉に、隣に立っていたもう1人の少年がが反論した。

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