四竜帝の大陸【青の大陸編】
記念すべき初抱っこではりこを落としてしまい、怪我をさせた。
念願の初性交においては、りこの肉体強化に失敗した。
ぱじゃまも我なりに頑張っておるが、まだ1人では着れん。

「……」

どれも我としては、かつてない【やる気】に満ちておったのに。

「我は【やる気】初心者だからか? ふむ……あぁ、やっと来たか。反応が遅かったな、探知能力はメリルーシェの皇女以下か」

空間が揺れ、一人の術士が転移してきた。
近距離での転移術に<揺れ>があるなど、セイフォンのミー・メイの方が術士の才は上だな。
あれは特に転移に優れていた。
魔女を伴った転移においても、まったく<揺れ>が無かった。
 
我の気配を感知し現れたその男はペルドリヌの国王であり、教主でもある術士。
りこがこの世界に落とされるまで我が滞在していたメリルーシェの竜宮に、この男は数回訪れていた。
ペルドリヌに新たな竜宮を建立したので居を移して欲しいと願い出て、第二皇女と揉めていた。
ゆえに、顔は知っていた。
名は、知らぬ。
名乗っていたが聞く意志が無かったので、聞き流していた。
ダルフェ同様、我もペルドリヌに興味がなかった。
初代教主とは面識があったが。

面識といっても……あの女とは数回、身体を繋げただけだ。
顔も身体も憶えておらぬし、名も知らぬ。

憶えようとも、知ろうとも思わなかった。
今回の件がなくば、思い出すことも無かっただろう。

あの女は優秀な術士だったが、徐々に我が神だとか訳の分からん妄想を言い始めた。
あまりに煩いので他へ移り、それっきりだったのだが……こんなことになるのなら<処分>しておけば良かったな。
竜体を持つ我が人間以上に術式にたけ、強い力と永遠に等しい時間を生きるのは竜族でもなく、神であるからだ……などと言い。
我は特別な存在で、いつの日か世界を粛清するのだとほざいておった。 

そして、我を古の魔神信仰と結びつけた……狂った女だった。
我と出会う前から狂っていたのか、我に出会った所為で狂ったのか。
まあ、どっちだろうと関係ないが。
ペルドリヌが他国より我に関して詳しいのは、あの女が異常なまでに我を<研究>していたからだろう。
監視者・魔王・悪魔など、どれが最も我の存在を表すのに適したものなのか。
我はいったい何者なのかと、古い文献を掻き集めていた。
我に直接問うてきたこともあったが、我だとて自分の事を全て知っているわけではないし、答えてやる気も無いので無視していたが。
そういえば……我が名乗らずとも女は<ヴェルヴァイド>の名も自力でどこからか調べ上げ、我をその名で呼んでいた。

数多くの人間の女と接してきたが、それは非常に希な事だった。
だから顔も身体も憶えてはおらぬが、“存在”は記憶に残ったのやもしれぬな。



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