四竜帝の大陸【青の大陸編】
「かっ……母様」

私はカイユさんを力いっぱい、抱きしめかえした。

「母様」

なぜカイユさんが私を娘と間違えてるのかは、分からないけれど。

「母様。お産、頑張ってね。弟ができるの、私……とっても嬉しい」

貴女がそう言うならば、それでいい。

「母様。少し休んで落ち着いたら、ダ……父様にお産の場所に、連れて行ってもらおうね。あ、ハクちゃんに術式で送ってもらう?」

抱きしめ、抱きしめられて。
体中に、心に。
貴女の優しい香りが満ちる。
不安だった気持ちが……安らいだものに変わっていく。

ああ……そうだったんだ。
やっと、分かった。
カイユさんのあの懐かしい香りは……お母さんの匂いだったんだ。 

「……母様。母様がいない間、お城から出ない。母様達が帰ってくるのを、ハクと待ってる」

お母さん。

二度と会えない、大好きなお母さん。

私はずっと、お母さんの娘。
それは永遠に変わらない。

いなくなって、ごめんなさい。

苦しめて、ごめんなさい。

私、なんて酷い娘。

忘れないでって、覚えていて欲しいって思ってしまう。
お母さんを苦しめるの、分かってるのに。

私、なんて酷い娘。

お母さん。

お願い。

お母さん。

「ねえ、母様」

忘れないで。

「弟の名前、なんていうの?」

私を。

忘れないで。




  
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